京都駅で母と待ち合わせをしたのは、6月中旬の朝でした。
「6月って、京都はもう夏?」って改札を出てきた母に聞かれて、答えに少し詰まりました。確かに気温的にはまだ初夏で、本格的な夏ではない。でも京都の街並みでは、もう浴衣を着てる人がぽつぽつ歩いてました。
その日、母と2人で初めて京都を着物で歩く予定でした。私はレース着物、母は浴衣を予約しておいて、ミモザの店内で着替えながら、6月の京都が「夏前夜」みたいな空気感だなと、改めて思いました。
6月は「浴衣を先取りできる」シーズン
ミモザの店舗ラインナップは、ゴールデンウィークの時期から段階的に浴衣が並び始めて、6月に入る頃には浴衣が中心になっていきます。
つまり6月の京都は、本格的な夏が来る前に「浴衣を先取り」できる時期です。7月の祇園祭シーズンに浴衣を着るのが定番なんですけど、その1ヶ月前に着てしまえば、混雑も避けられるし、季節感も味わえます。
着物のラインナップも残っているので、迷ったら両方を見比べてから決められます。母娘や姉妹で「片方が着物、片方が浴衣」みたいな組み合わせもアリで、写真に撮ったときに対比が出て面白いです。
「夏着物・浴衣」の違いをサクッと
「夏着物」と「浴衣」って言葉、似てるんですけど別物です。
夏着物は、絽や紗といった透け感のある夏用の生地で仕立てた着物のこと。本来は7月〜8月の盛夏に着る着物で、襦袢や帯、足袋などひと揃え必要です。きちんと感が強くて、お茶会や夏のお出かけで活躍します。
浴衣は、もともと湯上がりや夏祭りの軽装で、襦袢を着ない、足袋も履かない、帯も浴衣用のシンプルなもの。気軽に着られるのが最大の特徴です。
ミモザの6月のラインナップは、浴衣がメインで、レース着物も併存しています。「絽・紗の本格夏着物」というよりは、「レース着物(透け感のある現代風着物)と浴衣の両方が選べる」イメージで考えるのが分かりやすいです。
6月に「先取り浴衣」をおすすめする理由
ひとつ、混雑が少ない。7月の祇園祭になるとレンタル店も混みますが、6月はまだ余裕があります。当日予約でも空きがあったり、希望の柄を選べる確率が高いです。
ふたつ、写真がレア。SNSに上がってる京都の浴衣写真は、7月以降のものが圧倒的に多いです。6月に浴衣を着ると「みんなが着る前に着てる」感が出て、写真の希少価値が上がります。
みっつ、暑すぎない。盛夏の京都はかなり蒸し暑いんですけど、6月はまだ朝夕は涼しい日もあります。浴衣のメリット(涼しさ)と、暑すぎないメリット(歩いてもバテない)が両立する稀な時期です。
つまり、6月の京都で浴衣を着るのは、ハイシーズンの先取りでもありメリット最大化でもある、二重に賢い選択です。
「祇園祭まで待てば本格的な夏感が出る」と思いがちですけど、6月は6月で「梅雨と初夏のあいだ」の独特な空気感があって、その雰囲気は7月の浴衣写真には絶対に映らないものです。逆に言えば、6月の浴衣写真には祇園祭の浴衣写真にはない静けさが残ります。
6月の浴衣コーデのおすすめ
色は、淡色〜中間色が6月にはぴったりです。真っ白だと夏祭り感が強すぎて、6月の街並みと少し浮きます。生成り、淡いブルー、淡いグリーン、淡い藤色あたりが、初夏の京都に馴染みます。
柄は、控えめな小花柄か、シンプルな縦縞・格子が大人っぽく決まります。大柄の朝顔とか花火柄は、もう少し夏が深まってからのほうが季節感が合います。
帯は、半幅帯で軽く結ぶスタイルが流行っています。リボン結びや変わり結びで、後ろ姿のシルエットを作れます。スタッフに「シンプルに見せたい」「華やかに見せたい」のどちらかを伝えると、合う結び方を一緒に考えてくれます。
帯飾りや帯揚げ、和傘などの小物オプション(550円〜1,000円)も、6月の浴衣には軽く差し色を入れる方向で使うとちょうどいいです。盛りすぎず、引きすぎず。「あと一手」を加えるくらいの感覚で十分映えます。
レース着物との組み合わせも面白い
母が浴衣で私がレース着物、という組み合わせで歩いてみたんですけど、これが意外と良くて。
レース着物は普通の着物より涼しいので、6月の気温でも快適です。透け感のある袖や裾が、浴衣ほどラフではないけど着物ほどフォーマルじゃない、絶妙な位置にあります。
母娘で並んだとき、母の浴衣が「軽さ」を、私のレース着物が「ちょっとした品」を出してくれて、写真でバランスが取れてました。「同じ系統だけど立場の違いが出てる」みたいな絵になって、母も気に入った1枚が何枚かありました。
母と歩いた、初夏の京都の半日
ミモザに10時に到着して、母には浴衣のラインナップを、私はレース着物を見せてもらいました。母は淡いブルーの小花柄、私はくすみベージュのレースを選んで、着付けが終わって11時に出発。
最初に向かったのは、八坂神社。母が初めての着物姿で歩く緊張感をほどくのに、本殿前の参拝が良いリハビリになってました。境内を1周して、母が「思ってたより着物って動きやすいんだね」って言ってきて、それが少し嬉しかったです。
お昼は四条河原町の和食店で、座敷席をお願いしました。着物姿で座敷に座る母を見て、なんとなく祖母を思い出しました。家族写真に残ってる、私が小さい頃の祖母の浴衣姿に似てるなって。
午後は鴨川の河原まで降りて、川沿いを少し歩いて、夕方近くにミモザに戻りました。3時間ちょっとだけの着物体験でしたが、母の歩幅にぴったり合った、ちょうどいい長さの旅でした。
途中、母が鴨川沿いでカワセミを見つけて、しばらく2人で見てた時間がありました。歩く予定がふわっと止まる、こういう時間が浴衣だと自然に出てきます。普段着で歩いてたら、たぶん通り過ぎてました。
返却前に母が「来年はもう少し早く来て、紫陽花も見たいね」って言ってきて、来年6月の予定がその場で1つ決まりました。
まとめ
6月の京都は、夏着物・浴衣を先取りできる絶妙なシーズンです。
ミモザの浴衣ラインナップは6月にメインへ切り替わり、レース着物も併存しているので、選択肢は意外と広いです。混雑前、暑くなりすぎる前、SNSに溢れる前。3つの「前」をうまく拾える月です。
母娘・姉妹・友達同士で着物と浴衣を分けるのも面白いし、1人でも自分の納得いく1着を選びやすい時期です。本格的な夏が来る前に、京都の初夏を浴衣で歩いてみてください。
母と歩いた半日が、私にとって今年の梅雨のいちばん良い記憶になりました。来年の6月もまた来ます、ということだけ確定して、その日が静かに終わりました。